銀行(物件販売時の融資実行銀行)に対する責任が問われようとしている

一地方銀行の一支店が、この数年で約1千数百億円を800人と言われているサラリーマン投資家に融資しましたが、サブリース管理会社S・D社が正常なサブリース業務を履行できないことを知りえる立場にいながら、物件販売時の融資を過剰に行い、S・D社の債務不履行を助長した責任が問われようとしています。この再建が上手く行かなければ、「戦後最悪」のパターンも・・と、そう考えざる得ない状況です。

S・D社の設立からシェアハウス業界NO.1になるまでの平成29年11月末時点までの動向

公式に発表された資料・登記簿謄本から

平成24年8月2日〔2012年)    S・L社設立
平成26年9月30日〔2014年〕派遣業A社と①業務提携〔就労支援〕 

此れにより3社によるサブリースビジネスモデルが構築されたのか!?

(参考:人材派遣業A社とS銀行Y支店は同じフローアーにある)

業務提携〔就労支援〕当時S・L社の管理棟数は、 88棟1232戸であった。                         

平成29年8月時点、3年余りで管理棟数は、O社発表では1000棟 10,000戸

となった。S銀行の800人とも言われているオーナーに対する融資額は約1千数百億円以上とも言われている

平成29年8月2日   ・L社O社と資本業務提携発表②〔O社の管理下か!?〕

平成29年10月1日  S・D社に社名変更と同時に相互に役員就任

<登記簿謄本から>

1. S・D社役員就任〔平成29年10月1日) K代表取締役、他取締役2名

2. O社役員就任(平成29年9月26日)  D氏(S・D社代表取締役)

ここで経営主体はS・D社からO社に移行か、いわゆるB・Oか!?

平成29年9月末     S銀行はA氏に対してと土地購入費2億年を融資〔例1)

平成29年10月    S銀行は新規オーナーに対して融資受付停止か

平成29年10月26日 S・D社からオーナー全員に「1年間期限付きの家賃減額決定の通知書」が速達で発送された。                  

平成29年10月26日 同時にS銀行は金利引下げに応じる模様。審査結果は来年初旬

O社とS・D社の資本関係、人的関係を見ると、子会社に独立の法人としての実体がなく、実質的に親会社と同一の法人と見られる場合、特定の法律関係において子会社の法人格を否定し、親会社に責任を追及する余地があるのではないか。O社の対応も注目される。

本来あるべき総合的な経営戦略は

「かぼちゃの馬車」のサブリースビジネスモデルは、今、続々と行なわれているアパート建築と同様の「建築・サブリース管理会社一体型」です。これは永遠に新規オーナーを見つけ、建て続けないと破綻するパターンと同じで、実質家賃設定の問題もあり、ましてや東京都でも限られた地域でしか成立しない、ビジネスモデルとしては、とても厳しいと思われます。

S・D社は、2012年に設立されたばかりですが、2015年の売上高は188億円(前期は20億円)、営業利益12億円(同4900万円)と、この急激な成長ですが、今回の「サブリース賃貸借契約」後、半年~2年で「家賃減額の通知書」とは、本来あるべき総合的な経営戦略はどこに有るのでしょうか。

急激な売上げを可能にしたのは、深く金融機関が絡んでいた!?

 S・D社を取り巻く販売代理店の積極的な売込みがあり、なんと代理店の中には融資可能な書類作成を指南していていたたことも明らかになっています。中には1回の土地・建物取引で3,000万円~7,000万円の粗利を稼ぐ、まるでハイエナ集団と呼ぶに相応しい「金亡者の軍団」と呼ばれてもおかしくありません

「建築・サブリース管理会社一体型」のノウハウを生かし、3割~4割、若しくは5割の粗利が乗せられています。金融機関を含め全て関係者は、承知されているモデルです。これでは、どんな宿泊ビジネス構築を考えても、上手く機能する筈はありません。

全く異常な状態です。(別の見方ですが、ある意味、軍団の目的達成でしょうか!?・・・)

TVコマーシャル・出版本では、

女性専用シェアハウス・実現した社会貢献型ビジネス

家賃外収入というイノベーションを実現

30年一括借上のサブリース

フルローンで融資可能

不動産業界に革命を興す!

この宣伝効果もあり、大変属性のよい約800名とも言われている投資家〔主にサラリーマン〕が、このビジネスモデルに参加していますが、これはバブル崩壊時前にも良くあった手法に似ていて、フルローン若しくはオーバーローンで、審査期間1週間程度で、数億単位で貸し出しを行っているようです。

そもそもサブリース事業の構成要素とは?

本来所有の土地活用で、そもそも土地購入からでは成り立ちません~

 <構成の三要素>

・ビジネスモデル

ワンルーム展開 〔例〕レオパレス21
対象:若い人〔学生・工場〕

・オーナー募集

  • 土地の有効活用
  • 相続
  • 利回り

・金融機関

  • 地方銀行
  • 国民金融支援機構
  • 貸し出し金利

この三要素のバランスが壊れると、家賃減額や契約解除へと向かっていきます。

「寄宿舎」として建築基準法もクリア

 低迷する住宅業界の注目です。「かぼちゃの馬車」は一時問題となったマンションの一室を間仕切りしただけの「脱法ハウス」とは異なり、「寄宿舎」として建築基準法もクリアしているといっています。しかも、キッチン、トイレ、シャワー、洗濯機などは共用で居室部分はわずか7㎡ですが、新築のため家賃は普通のワンルーム並みです。広告では、狭い土地でも高利回り〔8%程度〕が得られると、言っています。

しかしながら、オーナーへのサブリース家賃支払いの為、収入の多角化を図るとの謳い文句もあるようですが、現状の相当なるコスト高の物件の月々の銀行へのローン支払いを賄えるものではとてもありません。

「新たな貧困ビジネス」の様相

 一方、入居女性側のメリットは、おしゃれな外観と初期費用がかからない「敷金・礼金ゼロ」で入居できることです。地方から職を求めて上京してくる20代の非正規雇用の女性が年々増えていますが、彼女らにとって、「敷金・礼金ゼロ」は助かります。かといってネットカフェに寝泊まりすれば、履歴書に住所を記載できず就職活動すら満足にできません。東京一極集中と格差社会の歪みが、女性たちを「かぼちゃの馬車」に向かわせているのでしょうか。S・D社では他社との提携により、入居者に就職斡旋や婚活サポートまで行っているようですが、実態は判りません。これは、さながら「新たな貧困ビジネス」の様相を呈してきています。

シェアハウスの市場

11月15日豊島区条例案が可決され、空き家をシェアハウスにする場合、特に建築基準法の用途変更は必要ないとしました。他の区にも同様の条例ができそうで、シェアハウスは、今後、ダブついてくることは間違いありません。

現在、かぼちゃの馬車の入居率は、入居斡旋手法の未熟さもあり、数十%程度と言われています。

全オーナー向けに「家賃減額のお知らせ」

10月26日突如、何の前触れも無く、全オーナー〔800名と言われている〕向けに「家賃減額のお知らせ」が速達で送られてきました。書かれていたのは、S銀行から融資されたオーナーに関しては1年間期限付きで、月々のローン返済金額に合わせ家賃を振り込むとの内容です。当然他行から融資を受けたオーナーも居られますが、その点には触れていません。また同封で、S銀行との金利引き下げ交渉がS・D社とまとまったので、個別に所定の書類を持参してS銀行で、交渉をして欲しいとの依頼文もありました。また、問題はこの1年間期限付きの理由も定かではなく、余りにも陳腐な理由で、非常に慌てふためいた感じを受けました。

この金利減額は、銀行か、S・D社か、それとも社か、どちらのサイドから持ちかけられたかは不明ですが、少なくともやり取りは数ヶ月を要していると思われます。〔8月頃からか〕

通常今までのセンターの経験では、家賃減額の場合、他の管理会社さんは、数回以上の打ち合わせし、双方納得の上で、決めていきますが、今回のように一方的に速達で「減額ありき」は、初めてであり、オーナーと管理会社の本来あるべき協働意識、或いは、信義則等は、微塵も感じられないのは、とても異常だとしか言えません。

1年間の家賃減額は債務不履行を問える。損害賠償として請求可能

減額理由に合理性が無い場合には、債務不履行として約定していた家賃を請求することは、当然と考えられます。これに関しては、後日オーナー会で決めて行きたいと思います。

【参考資料】

平成16年11月8日付最高裁におけるサブリース裁判のうち、滝井裁判官が補足意見として呈示した借入金利負担軽減分の賃料減額が採用されている。

このように、賃貸人は、専門家としての賃借人による事業収支の予測に基づく提案を受けて、多額の借入金によって建物を建築し、これを賃借人に一括して賃貸することを内容とする業務委託契約と賃貸借契約を締結したものであった、その中で賃料自動増額特約が定められている以上、賃借人が当該建物を転貸することによって受け取る賃料収入がその後の経済事情の変動により減少しても、これにより生ずるリスクは賃借人が引き受けたものとして、これを直ちに賃貸人に転嫁させないというのが衡平にかなうものと考える。

取引銀行にないことは、何か不自然さを感じる

S銀行は、株式会社S・Dには融資を行っていないようです。

取引銀行

  • 三菱東京UFJ銀行 銀座通支店
  • 東京スター銀行 本店営業部
  • SBJ銀行 東京本店
  • 大東京信用組合 銀座支店
  • 第一勧業信用組合 中野新橋支店
  • 群馬銀行 荻窪支店
  • 京葉銀行 東京支店品川営業所   

S・D HPより

 

特にS銀行は、株式会社S・Dとは、接点はない、取引はないことを強調していますが、何故、金利交渉のお知らせをS・D社から送られてくるのか、この様な事象をみますと、S銀行と株式会社S・Dは、とても緊密な関係だと言わざるを得ません。この様な「ズブズブ」な関係にも係わらず、S銀行が、取引銀行にないことは、敢えてなのか、不自然さを感じます。

現在、S・D社が窮地陥って、家賃の支払いが滞る、そうすると、近い将来にデフォルト等が起き得ることが考えられます。S・D社から出るであろう再建案に、S銀行は、資金面から支援しなければなりない立場であると考えますが、出来ないとすれば、何故なのか疑問です。S・D社が支援を申し込まないからでしょうか。

S銀行は予兆を感じていなかった!?

センター相談者の中には昨年6月には、S・D社から、サブリース賃料の減額要請がきていました。通常、受注から建築までは、最低でも6カ月かかります。10月末以前の6カ月前から破たんの可能性を含んでいるのにも係わらず通常販売を継続しているようです。

また、〔例1〕他の相談者の中には、この10月に銀行は【家賃減額】つまりビジネスモデル破綻の兆候をつかんでいたのにも係わらず、9月28日に約2億の土地代金の融資実行を行っています。人の人生をもてあそぶ、その身勝手さに怒りさえ覚えます。

S・D社の債務不履行を助長したと言われても仕方がありません。

資金需要を掘り起こすビジネスモデルを模索!?

S銀行は、株式会社S・Dと事前協議を経て、当初からフルローン(4.5%)、オーバーローン、はたまたフリーローン(7.5%)の抱き合わせ等と完全に市場環境つまり収益性を無視した融資を行っていたようです。

ここで重要なのは、S銀行はこのサブリースビジネスモデル〔土地購入・建築、収益モデル、高金利)は短期間で破綻することが予見できる立場にありながら、刹那的な利益確保の為に、事前協議で決められた特定の支店 を通して、ここ数年で、オーナー約800名(とも言われている)になんと合計1千数百億円(!?)以上の巨額の融資を短期間で行なった行為は、まさに銀行と株式会社S・Dは一体不可分と見られて「ビジネスモデル製造責任及び銀行の貸手責任」を問われても仕方がないのです。

S銀行は、「S・D社特別枠!?」を設けて、積極的に、属性の良い投資家(主にサラリーマン)に融資を行ってきたのでないでしょうか。

フリーローン(7.5%)との抱き合わせ

オーバーローンの抱き合わせで強制的に500万円~1,000万円をフリーローンとして貸し付けています。使途は自由と言えども、上物が建つまでの半年間の土地融資毎月ローンの支払いやら諸経費の支払いに当てるように言われているようです。中には定期預金を求められているオーナーもいます。

 高収益なビジネスを展開

 ダイヤモンド社金融レポート「顧客向けサービス業務」散布図の再現によりますと、「S銀行」は利益率、前年比とも成績は抜群で、散布図では〔異常な高位置)にあります。他上場地銀では、6割が減益らしいようですが、S銀行では別次元の高収益なビジネス展開が行なわれたと解説しています。

立法府の怠慢が悲劇の連鎖を生もうとしている

消費者契約法の適用が必要です。現在オーナーを守る法律は無いに等しい状況です。

来所される相談者も小さな子供を抱えてられるサラリーマンです。

みなさん立場は、業者に比べれば、知識・情報・経験、交渉能力は格段の差があります。

当然、対等に渡り合えません。正しい判断が出来ないのです。

「個人の責任」とばかり、攻めるわけには行かないのです。

自分の力だけでは、どうにもならないことが、必ずあるのです。

 

これから悲劇の連鎖が始まろうとしています。対応の為には消費者契約法の適用を強く求めます。また、今後、金融商品並みの広告規制も必要です

上物を建てても、収益が上らない構造はもともと明白です。そのサブリース管理会社の経営状況が、おかしくなると、借地借家法で、家賃減額が認められているので、家賃減額の要請が必ずきます。それでも改善しなければ、契約解除に向かって行くのです

転用が出来なければ、ローンが残るだけです。こうして家庭崩壊の再生産が行なわれていくのです。放置することは一種の犯罪行為だと思います。

不良債権化への懸念や、多重債務者を助長

平成 29 年 10 月金融庁発表の「金融レポート 」17年3月期時点で、すでに過半の地銀で本業が赤字に転落しており、「昨年の推計を上回るペースで収益が減っている」と指摘しています。

「マイナス金利という逆風は一過性のもの」と考える地銀はなお多いいと、レポートでは「早期に持続可能なビジネスモデルの構築に向けた具体策を検討し、実践する必要がある」と結んでいます。金融庁がここまで口を出さざるを得ないということ自体、地銀が抱える危機の根深さを地銀は新たな収益源としてアパートローンやカードローンを拡大させてきましたが、空室率増加による不良債権化への懸念や、多重債務者を助長しているとの批判から自粛せざるを得なくなった模様です。

銀行の公益性が問われている

「貸す事は悪いのでしょうか」と・・・S銀行さんは話されましたが、問われているのは「公益性」です。矜持として成り立つ要素として必要なのは、「信義誠実の原則」、「信義則」です。 社会生活上、相手方が有するであろう「正当な期待」に沿うように正しく、行動することが必要なのです。

一般の人は、銀行の融資審査に通ったことは、ある意味お墨付きを貰ったと感じるのです。

衡平の原則として、S銀行の融資姿勢も問われます。当然このビジネスに取巻く「軍団」にも責任を追及する場面も出てくると思います。

「借手の自己責任」だと、それで済ませるわけには行きません。

 

つまり銀行の貸手側責任が問われる時代なのです

 

「かぼちゃの馬車」のビジネスモデルが、果たして上手くいくのか、現経営陣の手腕にかかっています。

 

(H29.12.18時点の情報に基いています)

 

総括続く

 

大谷昭二(日本住宅性能検査協会理事長)